サルア教師のありがたいお言葉集

 資料としてスタジオディーン版におけるサルアの台詞、およびサルアに言及した台詞を書き出しました。

1期5話

フィエナ「待ってくださいマクドガル。彼はまだ見習いで……。真の魔術士は連れの方です」
サルア「その連れなら、ちゃんとお迎えが行ってるさ」
マジク「お師様とクリーオウに!?」
マクドガル「フィエナ。巫女とはいえ庇い立てすればお前にも報いがある」
フィエナ「!」
マジク「フィエナ、ぼくのことはいいから」
フィエナ「……!」
サルア「やめておいた方がいいぜ。フィエナ」
フィエナ「!」

サルア「(枝を踏む音)そこをどきな。フィエナ」

マジク「お師様のアホー! 月謝払ってるんだからちゃんと魔術教えろー!」
マクドガル「うん?」
サルア「ああ?」

サルア「逃がすかよ!」

村人「サルア様! 魔術士を襲撃に行った奴らが戻ってきませんが」
サルア「魔術士にやられたな」
村人「ええ!」
サルア「乗り込んでくるかもしれねえ。油断するな」
村人「は、はい!」

サルア「おい掃除夫」
ボルカン、ドーチン「どき!」
サルア「そこにいるのはわかってんだ。顔出しな」
ボルカン「ど、どーもサルア兄さん」
サルア「お前の情報、正しかったぜ。魔術士が森の中にいやがった」
ボルカン「お役に立てて光栄っす! ところで、その、奴らを捕まえてどうなさるんで?」
ボルカン、ドーチン「ひぃっ!」
サルア「フン……。これからも生きて掃除夫として働きたいなら、余計な詮索はしないことだ」
ボルカン「は、はい」
サルア「そのナイフ、研いどいてくれや」
ボルカン「よ、喜んで……。ア、ハハハ、ハハハハ」
ドーチン「このまま一生、掃除夫……」
ボルカン「あの気障野郎め! 来週にでもパイプ椅子で畳み殺す! 殺す!」

オーフェン「我は放つ光の――ぐっ!」
サルア「ヘッ」

オーフェン「我は流す天使の息吹!」
村人「うわあああ!」
サルア「好きにさせるか!」

 

1期6話

マクドガル「異端なる魔術士から我らを守り、深き森の奥へ去った我らが主に祈りを。森の心臓に幸いあれ!」
村人たち「森の心臓に幸いあれ。森の心臓に幸いあれ」
サルア「幸いあれ、か……」

マクドガル「だんまりか」
サルア「そりゃ、答えたくないでしょうね」
マクドガル「どういう意味だ、サルア」
サルア「その男は、《牙の塔》の紋章をつけています。黒魔術界のエリートですよ。それが無様に捕らわれたとあっちゃ、名乗れんでしょう」
マクドガル「フン、エリートだろうと何だろうと、こいつの敵ではない」
サルア「早まらねえほうがいいんじゃ?」
マクドガル「誰がボスか忘れたか」
サルア「あなたがこの村のボスですよ。マクドガル」
オーフェン(! マクドガル……)

サルア「哀れなる魔術士に幸いあれ。フン」
サルア「お?」
サルア「あのガキの飯か?」
フィエナ「はい」
サルア「さっきの演説、『魔術士を根絶やし』のとこ、少し声が震えてたぜ?」
フィエナ「え……」
サルア「神の言葉を伝える巫女の声が震えてんのは、まずいんじゃあねえか?」
フィエナ「わ、わたし……」
サルア「フ……。おやすみ。巫女様」

ボルカン、ドーチン「うわああああ!」
サルア「!?」

サルア「何やってんだ、お前ら!」
ボルカン「む?」
ドーチン「兄貴!」
ボルカン「助けてぇ!兄貴ぃ!」
サルア「だいぶ回復したようだな。魔術士さんよ。俺はサルアだ。あんたは?」
オーフェン「……オーフェン
サルア「へぇ……。オーフェンね」
マジク「なにをするんです!」

サルア「へっ」
オーフェン「!」
ボルカン、ドーチン「ひえええええ!」
サルア「身動きできねえってのは、芝居か」
オーフェン「本当さ」
サルア「ふうん?」

サルア「なるほど。さすが、キリランシェロ」
オーフェン「!」

サルア「サクセサー・オブ・レザーエッジ。そのペンダントにはそう書いてある。鋼の後継、キリランシェロ。人類史上最強の黒魔術士、チャイルドマンの後継者と目された男」
オーフェン「黙れ!」
サルア「確か、五年前に《牙の塔》から失踪したと聞いていたが、本物みてえだな?」
オーフェン「黙れっつってんだ!」
サルア「おいおい無粋なことするねえ」
オーフェン「どっちがだ。刃物なんか使おうとしやがって。あんた一見レンジャー崩れみたいだが、違うようだな」
オーフェン「ガラスの剣? 確か大陸でも八本しかねえはず……。貴様、死の教師か」
サルア「サルア・ソリュード。死の教師を知っていたとは光栄だ」
オーフェン「キムラック教会直属の、暗殺者の総称だろう? 教会の意に沿わないものを、速やかに排除するって聞いたが。なぜその死の教師が、こんなところにいる」
サルア「なら、《牙の塔》のキリランシェロがその同じ場所にいる理由は? どっちが先に答える?」

フィエナ「サルア!? マジクまで……。いったいなにが」
オーフェン「安心しろ。とりあえず死人はひとりもいねえ」

フィエナ「お願いがあります。今すぐにこの村から逃げ出してください。サルアとマジクを連れて」
オーフェン「あんたは?」
フィエナ「わたしは行きません。ここに残ります」
オーフェン「それは勝手だが、こいつはキムラックの」
フィエナ「知っています」
オーフェン「!」
フィエナ「キムラック教会の死の教師。前に一度、心を覗いてしまったことがあって。彼はこの村でたった一人、わたしに親身になってくれた人なんです。だから、助けてあげたいんです」
オーフェン「マジクのやつ、ブレイクだな」

 

1期7話

サルア「う、うう……」
オーフェン「やっとお目覚めか」
サルア「痛って……。確か、後ろから何かが」
オーフェン「それについては深く考えるな」
サルア「ええ……?」
オーフェン「傷はフィエナが癒したから問題ない」
サルア「フィエナが?」
オーフェン「さて。マクドガルのところに案内してもらおうか」


オーフェン「これは取引だ。〇〇だが、あんたの命を狙ってるやつを教えてやる」
サルア「!?」
オーフェン「キムラック教会、死の教師の名をな」
サルア「魔術士! 裏切ったな!」
オーフェン「もともと暗殺者に協力する気はねえよ」
サルア「てめえ!」
オーフェン「我導くは死呼ぶ椋鳥!」
サルア「ぐああ!」

サルア「魔術の直撃を受けた拳銃のシリンダーが過熱しちまったようだな。そいつを無理に撃とうとすりゃあ、暴発もするわな。いきさつはどうあれ、これで俺の任務は完了だ。長居は無用ってわけだ」
サルア「俺、裏切り者ってのは結構好きなんだ。じゃあな、キリランシェロ」

サルア「来な。森を出るぜ」
フィエナ「サルア?」
サルア「あの魔術士に、何か騒ぎが起きたらお前とガキを連れて逃げろと言われてな。ガキは?」
フィエナ「マジクはオーフェンのところへ」
サルア「しかたねえ。じゃあ行くぜ」
フィエナ「……」
サルア「どうした? このままここに一人でいたくないって、いつも泣いてたんじゃないのか」
アスラリエル『村に裁きを下す。汝はそこを去れ』
フィエナ「わたしは行きません」
サルア「ああ?」
フィエナ「わたしは、自らの心に従います」

 

2期2話

メッチェン「あらためて名乗ろうかな。メッチェン・アミック」
オーフェン「あらためてね。俺は――」
メッチェン「サルアから聞いた」
オーフェン「!」
メッチェン「チャイルドマンの教え子で、《牙の塔》屈指の若い黒魔術士、キリランシェロ」
オーフェン「サルア?」
オーフェン「お前も死の教師か」
メッチェン「サルアは、あなたがいずれこの土地に足を踏み入れるだろうと言っていた。魔術士は見つけ次第殺す。それが死の教師の任務」

 

2期3話

オレイル「クオには従うことだ。お前も奴の手ほどきを受けた。クオは聖都にいる。わしは、オレイル・サリドンはここにいる。こんなところにな。その現実だけが事実だ」
メッチェン「ならばあなたがサルアを育てたことも事実です。サルアはクオが危険だと言っています」
オレイル「あの魔術士がそのクオを暗殺できると?」
メッチェン「彼、キリランシェロだけでは不十分かもしれません。クオは十年前、チャイルドマン教師をも退けました。師よ、あなたとともに」
メッチェン「そして今、クオの近辺にはネイム・オンリーとカーロッタ・マウセンがいます。あの二人も、わたしたち死の教師の中では最強と言っていい力を持っています。聖都にいるサルアと合流できたとしても、正直、彼らに勝てる自信はありません」

 

オーフェン「死の教師ってのは、ガラスの剣を使うもんだと思ってたがな」
メッチェン「あれは重いし重心がよくない。サルアくらいだ。ガラスの剣を使うのは」

 

キムラック教徒「メッチェン教師!」
メッチェン「サルアと連絡はとれた?」
教徒「それが、まだ」
メッチェン「……」

 

ラポワント「過去と現在は、やがて滅びに至る道程であり、それが三女神の約束なのである。万物はその流れに逆らえず、また逆らってはならない。滅びを受け入れ続けている限り、未来はどこまでも続くのである。祈りましょう。聖なるかな。生誕の美しきかな。運命の正しきかな。死の、聖なるかな
教徒たち「聖なるかな。生誕の美しきかな。運命の正しきかな。死の、聖なるかな
教師「ソリュード教師長。いつもながら素晴らしい説教でした」
ラポワント「おそれいります」
教師「ご兄弟ともども教会に尽くされて尊敬の念に堪えません」
ラポワント「いえ」
教師「実は弟君にお願いが。うちの息子に剣を教えていただきたいのですが。弟君は剣がお得意と評判です。息子は、神官兵になるのが希望でして」
ラポワント「弟サルアは忙しいようで、わたしもこのところ会っていないのです」

 

衛視「メッチェン教師。連れの方は?」
メッチェン「神殿街の手前で荷物を降ろしたら戻るわ」
衛視「そうですか……」
メッチェン「ちょっと聞きたいんだけど、サルア教師は戻ってきてるわよね」
衛視「はい」
メッチェン「そう。ありがとう」

 

2期4話

カーロッタ「わたくし、ずっと退屈していましたの。ですが、サルア坊やのことといい、近頃は面白いことがいろいろありますわね」

 

2期6話

メッチェン「聞きたいことはひとつだけよ。サルア・ソリュードはどこにいるの?」
カーロッタ「白状するとね。この街に仲間がだれもいなくなって、あなたがおろおろするところが見たかったのよ」

 

2期7話

サルア「寝てただけさ」
クリーオウ「ひゃあああ!?」
オーフェン「!」
オーフェン「サルア?」
サルア「ああ、ようやくお前は来てくれたってわけだ。キリランシェロ」
オーフェンオーフェンだ」
サルア「う……死体と間違われんのも、しゃあねえかもしんねえよな」
クリーオウ「オーフェン……知り合い?」
オーフェン「ん? ああ、フェンリルの森で……あのときお前は背後から殴っただけだからな」
クリーオウ「あー、知らない相手を殴るなんて、よくあることだし」
オーフェン「そのとき知り合った殺し屋、キムラックの死の教師、サルア・ソリュード。だったよな」
サルア「へっ、自分の名前は、言わせねえくせに」
オーフェン「ここにいれられて長いことたったってわけでもないみたいだな」
サルア「牢の二日が短いだなんて思うもんじゃねえぞ。手慣れた連中に尋問を受けりゃ、出るもんも出なくなるぜ」
オーフェン「その尋問のあとは、あそこの穴から地下道へか。試したくはねえな」
マジク「看守が来ますよ!」

サルア「来るぞ」
オーフェン「!」
サルア「奴らは必ず二人でやってくるぜ。ちょっとくらい派手になったって、上には聞こえねえよ」

マジク「お師様」
オーフェン「ここは……」
サルア「看守の詰め所だ。さっきの看守とそっくり入れ替わったってわけだ。ったく、どうしたってんだ? そこの坊やがいなかったら、危うくやられるところだったぜ」

サルア「魔術が使えねえ、とか言われてもな。そういうことってのはよくあるのか?」
オーフェン「……」
サルア「おい、俺の質問に答えろ。最大の戦闘力がなくなったんだ。なんか言えよキリランシェロ」
クリーオウ「オーフェン!」
サルア「呼び名ぐらい、ぐだぐたこだわってんじゃねえよ」
オーフェン「確かにその通りだ」
クリーオウ、サルア「!」
オーフェン「魔術士が魔術を使えなくなるなんてことはない。魔力と呼ばれる俺たちの感覚は、先天的に備わっていて、消滅することはない。それを制御する術が構成なんだが」
クリーオウ「構成?」
オーフェン「簡単に言うと、魔術の設計図だ」
サルア「で? なにができなくなったんだ」
オーフェン「構成が編めなくなった」

サルア「鍵は夜明けだ。夜だけが、俺たちの味方になってくれる。看守の交代は夜明けだ」
サルア「とっとと地上に出て、街に逃げ込もう。不本意だが俺の兄貴、ラポワントのところに隠れれば、半日は稼げる。こんな事態だ。使える武器から使っていこうぜ、相棒」

サルア「ここはな、すべてのキムラック教徒が聖地と崇め、祈り、信じてずっとやってきた。そんな街だ」
サルア「その中心で、すべてでもあるユグドラシル神殿。だれがこんな馬鹿でかい神殿を作ろうなんぞ言い出したんだか」
オーフェン「神殿が完成したときの教主、ラモニロック。現在の教主と同じ名前だが」
サルア「聖地を守る砦として神殿を建てたのだとか」
クリーオウ「神殿を作ったときに、さっきのおっきな地下道も作ったの?」
サルア「あれは人間が作ったもんじゃない。そのくらいは、気づいてただろ」
マジク「じゃあ、だれが作ったんですか」
サルア「お前のお師さんは魔術の最エリートだ。なら、わかるんじゃねえか?」
オーフェン「知らねえよ」
サルア「じゃあ気づいたことをみんな並べてみな」
オーフェン「人間の技術力では作れない。かなり古い。作りが天人遺跡に似ている。だがそれにしては荒れ果てている。……お手上げだ」
サルア「そうかい」
クリーオウ「答え、教えてくれないの?」
サルア「もうちっと自分で考えようって気にならねえのか?」
クリーオウ「むー」
マジク「ひょっとして……やっぱりあそこは天人の遺跡なんじゃないですか?」
オーフェン「おい、あそこはあまりに」
マジク「そう、壊れすぎているんです。でもそれが天人の遺跡じゃない理由にはならないじゃないですか。天人の遺跡をあそこまで破壊するような、とんでもない出来事があったのかも」
サルア「(口笛)ほれ、言わなくたって、考えりゃわかるもんだろ」
マジク「え?」
サルア「正解者はランクアップして、上座に行かなくっちゃな」
オーフェン「いまのが正解だったのか?」
サルア「そうさ。およそ三百年前に天人が建造した、最大にして最後の砦だそうだ。でかすぎて埋めることはおろか、塞ぐことすらできゃしねえ」

 

2期8話

サルア「そうだ、思い出した。地下道が砦だったころの名前。確かラグナロク砦、だったかな。ここは」
オーフェンラグナロク砦……」
クリーオウ「ここは?」
サルア「この穴を上がれば、神殿の最下層に出られる。上は十年前にチャイルドマン・パウダーフィールドが侵入した場所。詩聖の間だ」

オーフェン「!」
サルア「この詩聖の間で待ち伏せとは、思いきったことをするじゃあねえか」
クオ「貴様の思いきりには負けると思うがね。サルア・ソリュード」
クオ「魔術士と結託するとはどういうことなのだ? サルア」
サルア「(唾を吐く)思いきりは必要ねえな」

 

クオ「サルア。この前は泣いて許しを懇願していたように思ったのだがな」
サルア「さあ、俺は覚えてねえな。片っ端から爪を折られて、喉と舌に針を刺されたもんでね。にしてもだ、俺としては、あんたがなんで心変わりしたのか知りたいところだねえクオ? 毎週欠かさずやっていた最終拝謁を――」
オーフェン「最終、拝謁」
サルア「半年前から急に――」
サルア「!」
オーフェン「サルア!」
サルア「くっ……!」
クオ「お前がなにを言ったか教えてやろう。お前はな、こう言ったのだ。メッチェンと共に私を殺して、すべての教義を大陸に公開するよう、教主様に進言するとな」
神官兵たち「……!」
サルア「へえ。俺も拷問されてるときは、意外といいこと言うみたいだな。魔術士、いや、聖都以外のすべての人間と対立する今のやり方じゃ、キムラック教会は滅びる。哀れなドラゴン信仰者みたいによ。あんたがあの教主を傀儡にしている以上、あんたさえ排除すれば」
クオ「……」
サルア「さて。俺も面白いことを教えてやるよ、御大。ここにいるのはな、《牙の塔》のキリランシェロ。あんたが退けたっていう、あのチャイルドマン・パウダーフィールドの生徒だ!」
クオ「とっくに知っている。だからここに来た」
クオ「!」
サルア「へっ! あんたのご自慢のイフリートも、来るタイミングさえわかってりゃ、どうってことはねえ!」
クオ「呪われた魔術使いと手を結んだお前に、もはや我らが同胞たる視覚はなし。死ね!」
神官兵たち「!」
サルア「キリランシェロ。クオは俺が潰す。お前はあっちを全員相手しろ」
オーフェン「……って、お前ちょっと待てよ。俺はいま魔術が」
サルア「そいつを悟られないよう上手くやれ。神官兵はこの街から外に出たことがない。魔術を恐れてる」

 

オーフェン「ウイルドグラフ? ドラゴン種族の魔術だと?」
サルア「イフリート。魔人の鎧だ。魔術は通じねえんだ、あの御大には」
オーフェン「天人の遺産か!」
サルア「奴は俺がやる! 神官兵を叩け!」

サルア「ここではだめだ……キリランシェロ。詩聖の間だ」
オーフェン「?」
サルア「その門が開けば、クオは威力のある武器が使えな――ぐっ!」

クオ「この男が反逆しようとした理由、聞かせてやろう。この愚か者は、我らが教会がこのままではいずれ滅ぶと考え、改革を迫ったのだ」
サルア「違う……」
クオ「?」
サルア「退屈していただけだ。ぐっ!」
クオ「わたしは退屈などしていない。わたしはずっと、恐怖していたのだ!」

 

2期9話

ラポワント「派手に壊してくれたものだな。クオ」
クオ「この扉を壊したのは魔術士たちです。ラポワント教師」
ラポワント「侵入者は何人だ」
クオ「背約者を含めて五人」
カーロッタ「もうひとり背約者がいますわ」
カーロッタ「メッチェン・アミックが反乱に加わっているようです。昨日、わたしの寝室に襲撃をかけてきました」
ラポワント「結束というものを一度考えてもらいたいものだな」
カーロッタ「無理でしょう。だってメッチェンはわたしが嫌いなんですもの」
ラポワント「それでその数人のせいでネイム・オンリーは殺され、二十三人の神官兵を失い、さらに女神のお姿を見たであろう侵入者を取り逃がしたと」
クオ「手強い相手ですよ。ひさしぶりに」
ラポワント「まったく興味深い発言だ。では、もうここには魔術士はいないのだな」
クオ「はい」
ラポワント「では以後の警備は怠らないように」
クオ「わかりました。ですが」
ラポワント「なんだ」
クオ「背約者のひとり、サルア・ソリュードがあなたを頼ってくるかもしれません」
ラポワント「……奴がわたしを頼ってくるとは思えんがな」
クオ「それでも、奴にとって肉親はあなただけです。彼があなたの前に姿を見せたら」
ラポワント「わかっている」

 

サルア「う……ここは?」
クリーオウ「あ」
ボルカン「サルアの兄貴?」
クリーオウ「そうよ! ここはどこなの?」
ドーチン「魔術士の女の人が探してきた場所で、倉庫の管理小屋だと思うんですけど」
クリーオウ「いやそういうことじゃなくて、ここってまだキムラックなんでしょ。神殿はどっちかわかる?」
ドーチン「あれだけ大きな建物ですから、どこからだって見えますよ」
クリーオウ「案内して」
サルア「やめとけ」
クリーオウ、ボルカン、ドーチン「!」
サルア「クオは絶対に待ち構えてる。それにカーロッタって奴が」
マジク「あの、カーロッタって……」
サルア「死の教師だ」
クリーオウ「なんとかなるわよ、そんなの。この変な箱で戻った方が早いかな」
ドーチン「その装置では神殿に転移できないみたいですよ。魔術士の女の人がさんざん試してましたけど」
クリーオウ「なんでよー!」
ドーチン「そんな、ぼくの首を絞めたって!」
ボルカン「この顔踏み女! 弟に何をする! やはりこれは原油で化粧し殺すよりほかあるまい!」
クリーオウ「あーもう! うるさーい! レキ! このふたりをどっか遠くへやっちゃって!」
クリーオウ「あ、あれ」
ボルカン、ドーチン「どええええええ!」

サルア「ほれ、いいからさっさと歩け」
マジク「歩けって、ぼくらいまどこへ向かってるんですか?」
サルア「俺の兄貴の家さ」

マジク「うわー……」
クリーオウ「確かにいいお屋敷よね。でもそれだけに、ここを襲撃して占拠するのは難しいと思うわ」
サルア「俺の兄貴の家だって言ってんだろーが! 入るぞ」

サルア「兄貴は一応、教師長なんだ」
クリーオウ「牢屋に落っこちてた死体とは違うのね」
サルア「一応、俺も神官なんだけどな」
ラポワント「であるのになんと愚かな」
クリーオウ、マジク、サルア「!」
ラポワント「だがお前はいつだって愚か者だった」
サルア「兄貴……。まさか、待ち伏せているとはな」
ラポワント「君たちが神殿に侵入したという魔術士かね」
マジク「そうです」
ラポワント「なぜここに? 我々が君たちの訪問を望まないことは知っているはずだね?」
マジク「まだ、ぼくのお師様が神殿の中にいるんです」
ラポワント「! まだ魔術士が中に……!?」
マジク「だから助けに行きたいんです」
ラポワント「クオはもう魔術士は脱出したとわたしに嘘をついた。いったいなにが起きているというんだ」
サルア「俺やメッチェンが背くだけの何かが、起きてるということさ」
ラポワント「……」

クリーオウ「ここ、あんたの部屋?」
サルア「ああそうだ。死の教師になるまでは、ここにいたのさ。……お」
メッチェン「悪いわね。ここしか逃げ込むところがなくて」
サルア「大丈夫か」
メッチェン「あなたこそ」
メッチェン「カーロッタが、あなたは死んだって言ってたわ」
サルア「彼女は地下牢での尋問には立ち会ったことはないだろうからな。クオの野郎が尋問材料をそう簡単に殺さないってこと、知らなかったんだろうよ」
メッチェン「フフ。あなたたちも無事だったみたいね」
マジク「無事は無事ですけど……」
クリーオウ「どこへ消えてたのよー」
メッチェン「ちょっとやることがあってね。で、なんで合流できたわけ?」
サルア「キリランシェロが地下から神殿に侵入してきてな。このディープ・ドラゴンが地下道を案内したらしい」
サルア「ひょっとしてだが、ドラゴン種族と利害が一致したのかもしれねえな」
メッチェン「利害?」
サルア「奴らにしてみても、自分の目となるものが女神を確認するのは長年の悲願だったはずだ。奴らは何度となく最終拝謁をした人間を狙ってたはずだ」
クリーオウ「どういうこと?」
サルア「マクドガルだよ」
サルア「奴は最終拝謁を果たした」
サルア「ディープ・ドラゴンとあと一歩ってところで接触するはずだったが」
マジク「その最終拝謁って……」
サルア「もう一度神殿に行けばわかる」

ラポワント「目立つ傘を差してきたものだな」
カーロッタ「クオが言ってませんでした? 弟が来たら報告しろ、と」
ラポワント「それよりも、クオが嘘をついた。魔術士がまだ神殿の中にいる可能性がある。取って返して事態を処理しろ。これは神殿庁の命令だと思え」
カーロッタ「それならば教主様も知っておりますわよ」
ラポワント「なに? いや、それよりカーロッタ、貴様が教主様のお言葉を賜ったというのか」
カーロッタ「それ以上ごねるようなら、弟を庇い立てしているとみなしますわよ。ラポワント教師長」
ラポワント「何が起こっているのかはっきりするまで弟は渡せない」
カーロッタ「しかたないですわね」
ラポワント「! 死の教師はこの聖都を守護する任を負った者だ。それが裏切り、仲間割れ、騙し合い。スパイごっこでもやっているのか!」
カーロッタ「さて、どうかしら。わたしにはむしろ、この聖都のほうが、玩具の箱庭に見えますけどね」
ラポワント「……!」
ラポワント「あああああああ!」

マジク「ここへ武器を取りに来たんですか?」
サルア「丸腰では神殿に行けないからな」
クリーオウ「あ、これなんかよさそう」
サルア「なかなか見る目があるじゃあねえか。そいつの銘はスレイク・サースト。そいつと、こいつが、ソリュード家が蒐集した目玉だよ。こいつには銘がない。だがキリランシェロなら知ってるかもな。奴に渡してやってくれ。その役目は、お前さんがいいだろう。それを抜く資格があるのはキリランシェロだけだ」
クリーオウ「頼むから、オーフェンのことはオーフェンって呼んでくれない?」
サルア「わかった。その剣はどっちもお前さんにやるよ」
クリーオウ「じゃああんたはどれを使うの」
メッチェン「これでしょ」
サルア「こいつがあれば、クオに負けない」
マジク「無理ですよ」
サルア「なにがだ?」
マジク「その剣があろうとなかろうと、あの鎧を着た人に勝てるわけがない」
サルア「だとしても行くしかない」
メッチェン「そうね」
マジク「そんな。むざむざ死にに行くなんて」
サルア「お前さんたちはここで留守番だ」
クリーオウ「なんでよ!」
サルア「クオとカーロッタを同時に敵に回して、お前さんらを守ってやる自信はねえからな」
マジク「守って……。馬鹿にしないでください! ぼくだって魔術士なんだ!」
サルア「だったら俺を倒してみな」
メッチェン「サルア」
マジク「やってやる!」
クリーオウ「ちょっと、マジク!」

マジク「我は放つ光の――」
サルア「うらあ!」
クリーオウ、マジク「!」
クリーオウ「ちょっと! 本気で刺す気だったでしょ!」
サルア「なんで俺を倒さなかった?」
マジク「え?」
サルア「俺は唯一の武器、その槍を外したんだぜ。そのあとに俺を倒すのは簡単なはずだ。なぜ、やらなかった?」
マジク「あ……」
サルア「そのあたりが、お前さんと奴の違いのひとつさ」
マジク「……」

サルア「!? なんだ?」
クリーオウ「!」
マジク「うわあ!」
サルア「あ、兄貴……」
カーロッタ「はあい」
メッチェン「!」
カーロッタ「フフフ……」

 

2期11話

サルア「メッチェン!」
メッチェン「大丈夫。それよりもクオを!」
カーロッタ「つきあっていられませんわ。あなたがたは箱庭の中で遊んでなさい」
メッチェン「くっ!」
サルア「放っておけ!」

 

クオ「サルア。愚かな若者よ。お前は無力だ。お前だけではない。我々は皆、傀儡にされていたのだ。わたしの命はここで終わる。だが魔術士の汚れた血も、それを受け入れようとする背約者どもも、これで終わりだ」

 

メッチェン「女神様……!」
サルア「違う! 自分の死を崇めちまったら、もう駄目なんだよ!」

ボルカン「みぎゃ!」
サルア「ったく、このクソ忙しいときに」

オーフェン「もうちょっと療養してった方がいいんじゃねえか?」
オーフェン「山の向こうにいい温泉もあるっていうし」
メッチェン「オレイルが心配だから。一度、彼を迎えに寄って、またどこへ行くか考えるわ」
サルア「背約者として、教会から指名手配を受けちまったからな。これから、ずっと逃亡生活さ」

メッチェン「じゃあ行くわ」
オーフェン「こいつ本当にもらっていいのか?」
サルア「お前以外誰が使うんだ? チャイルドマン・パウダーフィールドが、十年前、オレイルの戦士としての生命を奪った代物だからな」